米競馬界が「ウマ娘」と有馬記念を研究  JRAが米国で語った“若者を競馬場へ連れてくる方法”

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米競馬界が「ウマ娘」と有馬記念を研究 
JRAが米国で語った“若者を競馬場へ連れてくる方法”

8月6日、米ニューヨーク州サラトガで開かれた米ジョッキークラブの年次業界会議「Round Table Conference」。

米競馬界の関係者が集まるこの場で、日本の競馬が一つの成功例として紹介された。

壇上に立ったのは、JRAニューヨーク事務所の橋本知之氏。

テーマは「若い世代をどう競馬へ呼び込み、その人気を持続させるのか」。

そこで日本の具体例として紹介されたのが、

「有馬記念」
「ウマ娘 プリティーダービー」
「ザ・ロイヤルファミリー」

だった。

日本ではすっかり身近になったこの3つを、JRAはなぜ米国競馬界に紹介したのか。

そこには、現在の米国競馬が抱える大きな悩みと、日本とはかなり異なるファン獲得事情があった。

□ 2400万人がダービーを見るのに、その後が続かない

今回のRound Tableで大きなテーマとなったのが「ファン開拓」だった。

米競馬界は、そもそも競馬を見てもらえていないわけではない。

2026年のケンタッキーダービーは史上最多となる視聴者を集め、その数は約2400万人。

マスターズ最終日や2025年ワールドシリーズの平均視聴者数などを上回る規模だったという。

ところが問題は、その先にある。

会議では「その2400万人の大部分は、その年にもう一度競馬を見ることがない」と指摘された。

競馬最大のイベントには人を集められる。

しかし、その人たちとの関係を継続できない。

米競馬界が実施した25~45歳を対象とする全国調査でも、潜在的なファンは競馬そのものを知らないわけではなく、「どうやって競馬に入っていけばいいのか分からない」という問題が浮かび上がった。

調査を紹介したヴィクトリア・エドワーズ氏は、これを非常に分かりやすい言葉で表現している。

「説得する必要はなかった。必要だったのは招待することだった」

そんな米国競馬界の前で紹介されたのが、日本のファン獲得策だった。

□ 日本代表の一つ目は「有馬記念」

橋本氏が最初に紹介したのが有馬記念だった。

有馬記念ではファン投票によって出走馬の一部が選ばれる。

日本の競馬ファンには当たり前の仕組みだが、橋本氏はこれを「ファンが見たい馬を選ぶことに直接参加できる仕組み」として説明した。

つまり、ファンは単に用意されたレースを見るだけではない。

「自分が見たい馬を選ぶ」

という形で、レースそのものに参加する。

橋本氏は有馬記念について、世界のサラブレッド競走で最大の馬券売上を生むレースとして紹介し、「現在の日本競馬で最も成功しているファン・エンゲージメントの例の一つ」と位置づけた。

日本では年末の風物詩として語られることの多い有馬記念だが、海外から見れば「巨大な売上を生むファン参加型イベント」という別の顔を持っていることになる。

□ しかしJRAが紹介したのは「実際の競馬」だけではなかった

ここからが今回の発表で特に興味深いところだ。

橋本氏は、日本の新規ファン獲得策を「pop-ification(ポピフィケーション)」と表現した。

これは「ポップカルチャー化」という意味で、競馬をゲーム、アニメ、漫画、映画、音楽、テレビドラマなど、一般の人が日常的に接する娯楽の中へ広げていく考え方を指す。

JRA自身が著名人を広告に起用するだけではない。

テレビドラマ、ゲーム、アニメなど、第三者が制作するコンテンツによって、日常生活の中に「競馬と出会う入口」を増やしていく。

その代表例として登場したのが『ウマ娘 プリティーダービー』だった。

橋本氏はウマ娘について、モバイルゲームを中心に漫画、アニメ、映画、音楽、ライブコンサートへと広がったメディアミックスを紹介。

そして、その人気が作品の世界だけで完結せず、実際の競馬への興味を生み、競馬場へ足を運ぶ行動にもつながったと説明している。

つまり、

ゲームを遊ぶ
↓
キャラクターのモデルとなった競走馬を知る
↓
実際の競馬に興味を持つ
↓
競馬場へ行く

という「競馬の外から競馬の中へ入ってくる入口」である。

□ 「ウマ娘」はどれほど大きな入口になったのか

では、その入口はどれほどの規模なのか。

『ウマ娘 プリティーダービー』は2021年2月に日本でサービスを開始した。

それから5年。

2026年3月の日本モバイルゲーム市場で、ウマ娘は再び「収益1位」になっている。

新作ゲームの一時的なブームではない。

5周年を迎えてなお、日本の巨大なモバイルゲーム市場で月間収益トップに立つコンテンツなのである。

そして現在、この話は日本国内だけでは終わらない。

2025年6月には英語版「Umamusume: Pretty Derby」がリリースされた。

センサータワーによれば、リリース後1か月のモバイル版で最大市場になったのは、今回JRAが講演を行った国と同じ「アメリカ」だった。

米国はダウンロード数の約30%。

さらに収益では70%以上を占めた。

米App Storeのゲーム収益ランキングでは最高4位。

Google Playのシミュレーションゲーム収益ランキングでは、18日間にわたって1位を記録している。

Steam版でも米国がプレイヤー数の約30%を占める最大市場となり、リリース後1か月の世界のシミュレーションゲーム販売数で1位となった。

つまり今回、JRAが米国競馬界に「日本ではウマ娘が競馬への入口になっている」と説明した時点で、そのウマ娘自体がすでに米国市場で大きな支持を獲得していたことになる。

これは今回の講演を考えるうえで非常に興味深い点だ。

□ もう一つ紹介された「Passing the Reins」とは?

橋本氏がもう一つ具体名を挙げたテレビドラマが「Passing the Reins」だった。

日本人には聞き慣れないタイトルかもしれない。

これは2025年にTBS日曜劇場で放送された『ザ・ロイヤルファミリー』の英語タイトルだ。

競馬、馬主、牧場、競走馬を中心に、人間と馬の20年間を描いた作品である。

日本でのテレビ放送は初回世帯視聴率11.7%。

第4話を除く全話で10%を超え、最終回は世帯11.4%、個人7.0%を記録した。

全10話の平均世帯視聴率は約10.6%だった。

2025年秋ドラマの中でも強い視聴実績を残した競馬ドラマだった。

さらにテレビ放送だけでは終わらない。

Netflixでは海外向けに「Passing the Reins」として配信された。

Netflixが公表した2025年下半期のエンゲージメントデータでは、同作は全10話で総視聴時間1160万時間。

全10話を約140万回視聴したことに相当する規模に達した。

「日本競馬と馬主文化」を題材にした国内ドラマが、テレビ放送だけでなくNetflixを通じて海外にも届けられたのである。

□ JRAが米国で伝えたかったこと

そして橋本氏は、ウマ娘と『ザ・ロイヤルファミリー』を紹介した後、一つの結論を示している。

競馬を知らない人に対して、競馬そのものを直接宣伝することだけに頼るのではない。

ゲームやアニメ、テレビドラマなど、人々が普段接しているメディアや異業種とのコラボレーションを通じて、まず競馬と出会ってもらう。

そこから興味を育てていく。

これが日本で行われているファン開拓の考え方だと説明した。

TDNによれば、会議では「ウマ娘とテレビシリーズが、日本で新しい競馬ファンを生む最大の要因だった」とする調査結果も紹介された。

5周年を迎えても日本のモバイルゲーム収益1位になるウマ娘。

英語版では米国が最大市場となり、収益の70%以上を占める。

平均世帯視聴率約10.6%を記録し、Netflixでも1160万時間視聴された『ザ・ロイヤルファミリー』。

これだけ大きな影響力を持つコンテンツが、競馬を知らない人と競馬を結びつける入口として機能している。

□ 「競馬を見せる」のではなく「競馬に出会わせる」

今回のRound Tableを通して見えてくる日本と米国の違いは、ここなのかもしれない。

米国にはケンタッキーダービーという巨大イベントがある。

約2400万人をその時だけの「にわか競馬ファン」は集められる。

それでも多くの人は、その後の競馬を見ない。

これは日本でもラグビーワールドカップの時などに言われていた事と似ている。

だから米国側からは、「競馬には需要の問題がある」「ファンとの継続的な関係を作らなければならない」という声が上がった。

一方、日本から紹介されたのは、一つの巨大イベントですべてを解決する方法ではなかった。

ゲームをしていたら競走馬を知った。

アニメを見ていたら競馬に興味を持った。

ドラマを見ていたら馬主や牧場の世界を知った。

好きな馬に有馬記念へ出てほしくてファン投票をした。

そして、いつの間にか本物の競馬を見ている。

競馬を直接売り込むのではなく、人々の日常生活のあちこちに「競馬への入口」を置く。

日本では当たり前になりつつあるこの仕組みが今、ファン開拓に悩む米国競馬界の前で、一つの成功例として紹介されたのである。

#うま娘 #ロイヤルファミリー #有馬記念 #ケンタッキーダービー

2026.8.7 うまラボ編集部

元記事:Xで公開した記事

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