ロイヤルアスコット慈善企画が中止 英国競馬を支える“ブックメーカーのお金”とは

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# 【ロイヤルアスコット慈善企画が中止 英国競馬を支える“ブックメーカーのお金”とは】

ロイヤルアスコットで毎年行われてきた慈善企画が、今年は実施されなかった。

一見すると、これは競馬そのものではなく慈善活動のニュースに見える。

しかし、海外競馬を日本の競馬ファン目線で見るなら、このニュースはかなり重要だ。

なぜなら、ここには日本競馬とはまったく異なる、英国競馬のお金の流れが表れているからだ。

ロイターが報じた「45万ポンドが消えた」ニュース

6月17日付のロイター通信は、ロイヤルアスコットのブリタニアステークスをめぐる慈善企画が、2026年は実施されなかったと報じた。

この企画は2021年から続いており、英国大手ブックメーカー各社が対象レースの利益を慈善団体へ寄付してきた。

参加企業には、

・ベットフェア(Betfair)
・ラドブロークス(Ladbrokes)
・コーラル(Coral)

などが含まれていた。

ロイターによると、この企画は開始以来、累計360万ポンド以上を慈善団体へ寄付してきた。

昨年だけでも約45万ポンド、日本円にしておよそ9,000万円規模の寄付が行われている。

しかし今年、その支援は停止された。

英国の賭博業界団体である

**ベッティング・アンド・ゲーミング協議会(Betting and Gaming Council=BGC)**

の広報担当者はロイターに対し、次の声明を出している。

> "We have taken the difficult decision to pause it this year as the industry continues to adapt to a challenging and evolving environment."

「業界が厳しく変化する環境への対応を続ける中、今年はこの取り組みを一時停止するという難しい決断を下した」

ここで重要なのは、この発言がブックメーカー1社ではなく、英国賭博業界全体を代表する団体の声明として出されている点だ。

つまり今回の中止は、単独企業の事情ではなく、英国ベッティング業界全体の環境変化の中で起きた出来事として説明されている。

理由は「税制」と「規制強化」

ロイター記事では、その背景として次のような要因が挙げられている。

・オンライン賭博関連の税負担増加
・ギャンブル規制強化
・利用者の支払い能力確認制度(アフォーダビリティチェック)
・競馬関連マーケティング費用の見直し

アフォーダビリティチェックとは、利用者が収入に見合わない過度な賭けをしていないか確認する仕組みである。

ギャンブル依存対策として導入が進められているが、ブックメーカー側は収益への影響を懸念している。

つまり今回の慈善企画中止は、

「寄付をやめた」

という単純な話ではなく、

英国ベッティング業界全体が税制や規制の変化に対応する中で支出を見直した結果として起きた出来事だと説明されている。

「税金が上がったから終了した」だけではない

ただし、この問題を単純化するのも正確ではない。

ロイター記事では、

ラドブロークスとコーラルを運営するエンテイン社(Entain)の広報責任者である

**サイモン・クレア氏**

のコメントも紹介されている。

同氏は、税制や規制が業界に影響を与えていることは認めながらも、

今回の慈善企画中止については、それだけが理由ではないと説明している。

ロイターによると、

すでに昨年の時点で複数企業が企画から離脱しており、業界全体で支える体制そのものが維持しにくくなっていたという。

つまり今回の出来事には、

・業界全体を取り巻く環境悪化

と

・参加企業減少による企画維持の困難化

という二つの側面がある。

寄付を受け取っていたのはどんな団体か

今回のロイター記事では、寄付先団体が2026年の中止についてどう受け止めたかまでは報じられていない。

そのため、その部分について推測することはできない。

ただし、2025年にBGCが発表した資料には、寄付を受けていた団体側のコメントが掲載されている。

主な寄付先は次の通りである。

・前立腺がん支援団体「プロステート・キャンサーUK」
・行方不明者支援団体「ミッシング・ピープル」
・元特殊部隊関係者支援団体「SASレジメンタル・アソシエーション」
・地域支援団体「アスコット・レースコース・サポーツ」
・競馬教育支援団体「レーシング・トゥ・スクール」
・青少年スポーツ支援団体「グリーンハウス・スポーツ」
・就労支援団体「テンパスノーヴォ」

プロステート・キャンサーUKの最高経営責任者、

**ローラ・カービー氏**

は、ブックメーカー各社の支援が研究活動や啓発活動を支えていると述べている。

また、

ミッシング・ピープルの最高経営責任者

**ジョー・ユール氏**

は、年間17万人が行方不明になる英国社会において、こうした寄付が重要な活動資金になっていると説明していた。

さらに、

アスコット・レースコース・サポーツの責任者

**フェリシティ・バーナード氏**

は、地域活動や競走馬に関わるレガシープロジェクトへの支援につながると評価している。

競馬教育支援団体レーシング・トゥ・スクールの

**ジョン・ブレイク氏**

も、若者へ教育機会を提供する活動に役立つと語っていた。

つまり、この企画は単なる広告イベントではなかった。

競馬を通じて、

医療支援

地域支援

教育支援

社会福祉活動

へ資金が流れる仕組みとして機能していたのである。

日本競馬ファンが抱く疑問

ここで、日本の競馬ファンなら自然に疑問が浮かぶはずだ。

なぜ英国競馬は、そこまでブックメーカー業界と密接な関係にあるのか。

日本ではJRAや地方競馬の主催者自身が馬券を発売する。

馬券売上から払戻金を差し引き、その残りが賞金や運営費に使われる。

香港でも香港ジョッキークラブが競馬運営と馬券販売を一体で行っている。

つまり、

主催者=馬券販売者

という構造だ。

しかし英国競馬は違う。

歴史的に民間ブックメーカーが大きな役割を担ってきた。

そのため、

主催者が直接馬券を売る日本型とは異なる資金循環が存在している。

英国競馬には「競馬賦課金制度」がある

その象徴が、

**ホースレース・ベッティング・レヴィ**

と呼ばれる制度である。

これは簡単に言えば、

ブックメーカーの利益の一部を競馬界へ還元する制度だ。

制度を管理するのは、

**英国競馬賦課金委員会(Horserace Betting Levy Board=HBLB)**

である。

HBLBによると、この制度は1961年に制定された

**ベッティング・レヴィ法**

によって創設された。

当時、競馬場外での馬券販売が合法化されたことで、

競馬場に行かなくても賭けができるようになった。

その結果、

競馬場の収入減少が予想されたため、

場外賭博の利益の一部を競馬へ還元する仕組みとして導入されたのである。

現在では、

英国競馬関連の年間粗利益が50万ポンドを超えるブックメーカーに対し、

利益の10%がレヴィとして課されている。

集められた資金は、

・競馬振興
・馬の生産支援
・獣医学研究
・獣医学教育
・競馬産業支援

などへ使われる。

英国競馬の賞金はどこから出ているのか

英国競馬の賞金は、日本のように馬券売上だけで支えられているわけではない。

英国競馬統括機関(BHA)が公表した2025年レーシングレポートによると、

2025年の英国競馬賞金総額は約1億9470万ポンドだった。

その内訳は、

・競馬場からの拠出 約1億330万ポンド
・英国競馬賦課金委員会からの拠出 約6330万ポンド
・馬主登録料など 約2680万ポンド

となっている。

つまり、

#英国競馬 は

競馬場

ブックメーカー由来の資金

馬主負担

など複数の資金源によって支えられている。

ロイターはさらに、

英国競馬が年間3億5,000万ポンド以上の経済的支援をベッティング業界から受けていると報じている。

だからこそ、

ブックメーカー業界の変化は競馬界全体にも影響を及ぼす。

今回のニュースが示したもの

今回のニュースを日本競馬の感覚だけで見ると、

「寄付活動がなくなった」

という話に見える。

しかし英国競馬の構造を知ると見方は変わる。

英国では、

#ブックメーカー

競馬場

馬主

スポンサー

が複雑につながりながら競馬を支えている。

今回停止された慈善企画も、その一部だった。

つまり今回のニュースは、

単なる寄付中止ではなく、

英国競馬を支える資金構造の変化を示すニュースだったと言える。

【参考資料】

Reuters
Horse racing British charities lose out as under fire bookmakers drop Royal Ascot support
2026年6月17日

Betting and Gaming Council
Charities set to win big at iconic Britannia Stakes race, thanks to Britain's bookies
2025年6月16日

Horserace Betting Levy Board
Background and Statutory Responsibilities

House of Commons Library
The Horserace Betting Levy

British Horseracing Authority
2025 Racing Report

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