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スマホ使用で騎乗停止、引退も
日本競馬の通信機器ルールは世界とどう違う?
兵庫県競馬組合所属の大山龍太郎騎手が、7月1日付で騎手を引退した。
大山騎手は、通信機器の不適切な使用により騎乗停止処分を受けており、報道によれば「この世界から離れる決意をしました」とコメントしている。
近年、日本競馬では通信機器を巡る問題が相次いでいる。
2023年には、JRAで若手騎手6人が開催日におけるスマートフォンの不適切使用により騎乗停止処分を受けた。
その後も通信機器を巡る問題は続き、地方競馬でも兵庫県競馬所属騎手7人が騎乗停止処分を受けた。
こうした出来事が続く中、
「日本の通信機器ルールは世界と比べて厳しいのだろうか」
そう感じた人も少なくないだろう。
そこで、日本と海外の制度を調べてみた。
まず整理しておきたいのが、「調整ルーム」と「ジョッキールーム」は別の施設だということである。
#ジョッキールーム は競馬場内に設けられた騎手控室で、レース当日に着替えや検量、待機などを行う場所だ。
一方、#調整ルーム は開催前日から騎手が宿泊する施設であり、JRAでは競馬の公正の確保と騎手の心身の調整を目的として設けられている。
騎手は開催前日に調整ルームへ入り、翌日に競馬場へ移動し、ジョッキールームで準備を行ってレースへ騎乗する。
もちろん海外にもジョッキールームは存在する。
今回調査した英国、アイルランド、フランス、香港、オーストラリア、アメリカでも、競馬場内にはジョッキールームや検量室が設けられ、通信機器に関するルールも定められている。
英国では、携帯電話をどこでも自由に使えるわけではない。
競馬場内に指定された「Phone Zone」が設けられ、騎手はその区域内でのみ携帯電話を使用できる。
逆に言えば、Phone Zone以外の場所では使用できない。
香港では、ジョッキールームや検量室など、競馬場内の制限区域での携帯電話の使用が厳しく制限されている。
オーストラリアでも、州や地区によって細部は異なるが、騎手がレース当日に入るジョッキールームや検量室などで、外部との通信を制限する規則が設けられている。
フランスやアイルランドでも、騎手がレース前後に出入りする検量室、パドック周辺、ジョッキールームなど、公正性に直接関わる場所で通信機器の使用が制限される。
アメリカは州ごとに規則が異なるが、今回確認した主要州では、日本のように開催前日から騎手が宿泊施設に入り、外部との通信を制限される制度は確認できなかった。
つまり、海外にも通信機器規制はある。
ただし、その対象はレース当日の競馬場内である。
ジョッキールーム、検量室、パドック周辺など、レースに直接関わる場所で携帯電話の使用を禁止したり、使用できる区域を限定したりする制度が多い。
この点だけを見ると、日本と海外に大きな違いはない。
日本でも、競馬場内ではジョッキールームや検量室などで騎手の行動が制限され、通信機器の使用も制限される。
大きく違うのは、その前段階である。
日本では騎手が開催前日から調整ルームに入り、宿泊を伴って外部との接触や通信を制限される。
今回調査した範囲では、前日から宿泊施設に入り、生活ごと外部との接触を制限する制度は日本以外では確認できなかった。
では、なぜ日本では開催前日から調整ルームへ入り、外部との接触を制限する制度が採られているのだろうか。
JRAは現在、調整ルームについて「競馬の公正の確保」と「騎手の心身の調整」を目的とした施設と説明している。
しかしさらに調べると、この制度には歴史的な背景があった。
調整ルームやジョッキールーム自体は1950年代に整備された施設とされている。
その後、1965年に発覚した中央競馬最大の不正事件と言われている「山岡事件」を契機に、騎手が開催前から調整ルームへ入り、外部との接触を断つ運用が厳格化されたと、複数の競馬メディアが紹介している。
山岡事件とは、複数の騎手と暴力団関係者が関与した中央競馬史上最大の不正(八百長)事件で、当時トップジョッキーだった山岡忞騎手が、暴力団関係者から金品の提供を受け、レース結果に影響を与える八百長に関与したとして逮捕されました。事件では山岡騎手だけでなく、複数の騎手や暴力団関係者が摘発され、有罪判決を受けています。
この事件をきっかけに、競馬の公正性を守るため、騎手と外部の接触をどう制限するかが大きな問題になった。
約60年前に起きたこの不正事件の影響が、現在の調整ルーム制度にもつながっているとされている。
ここで難しいのが、現在のスマートフォンは単なる電話ではないという点だ。
電話やメールだけでなく、SNS、動画視聴、ゲーム、電子書籍、音楽、電子決済など、多くの機能が一台に集約されている。
競馬ファンの心情的にはYouTube動画の視聴や暇つぶしのソシャゲくらいは許してやれよ…と思ってしまう事も分かります。
ただ、たとえば騎手がスマートフォンを手にしていたとして、それが動画を見ていただけなのか、外部と連絡を取っていたのか、馬券に関する情報を見ていたのかを、その場で完全に判別することは難しい。
だからこそ、日本では「何に使ったか」を後から判断するのではなく、「そもそも通信できる機器を持ち込ませない」という形でリスクを避ける制度になっている。
スマートフォンを持ち込まなければ、外部と通信することも、外部から情報を受け取ることもできない。
非常に厳しい方法ではあるが、公正性を守るという点では、最も分かりやすいリスク管理の方法でもある。
世界を見ると、制度にはそれぞれ違いがある。
しかし、今回調査した各国に共通していたのは、公正な競馬を維持するために、それぞれの方法で通信機器の使用を制限しているという点だった。
アメリカのように通信よりも薬物使用(ドーピング)などの不正防止に重きをおいた制度を運用している国もある。
日本の制度は、約60年前の不正事件をきっかけに現在の形へと厳格化され、今日まで受け継がれてきた。
スマートフォンが生活に欠かせない存在となった今、その運用方法について議論は続いていくのかもしれない。
一方で、日本競馬が長年築いてきた公正性をどのように守っていくのかという視点も、今後の制度を考える上で重要になりそうだ。
26.7.2 うまラボ編集部
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